マウスピースによる矯正治療は、どこで受けても同じ?
マウスピース矯正「インビザライン」はかなり一般的になってきて、一度は目や耳にしたことがある人も多いと思います。
そして、「マウスピース型装置による矯正治療は、どんな歯科医院で受けても同じような施術が受けられる」と思っている人もいるかもしれませんが、それは違います。
インビザラインは、歯型をとって、アメリカのアラインテクノロジー社に送ります。
そして、そのデータをもとにマウスピースが作られてきます。
患者さんにとっては、「歯型をとってアラインテクノロジー社が作るのなら、どこでやっても同じじゃないの?」と思っている方がかなりいらっしゃるみたいで、安いところでは30万円程、高いところでは150万円程と、「なぜそんなに価格が違うのか?」「同じだったら安い医院でした方が良いのでは?」と思われる方がいても当然のことだと思います。
しかしながら、結論から言うと、これは全く違います!!
どこでやっても同じということはあり得ません!!
また、矯正治療には時間やお金がかかるからといって、自力で歯並びを矯正しようとしたり市販のマウスピースを使用して矯正しようとしたりするのは避けるべきです!!
かなり危険です!!
実際、マウスピース型装置による矯正は、歯科医師の診療方針の立て方によって仕上がりや通院期間に大きな違いが出ることを知っておいていただきたいと思います。
当院では、専用のデジタルスキャナーである「iTero 5D plus」などによる精密検査をもとに、目指す状態をしっかりと見据えた上で、できるだけ期間を短くできるような計画を立てられるように心掛けています。
上記のように歯科医師がインビザラインの計画・設計を行なうわけですが、そのソフトウェアを「クリンチェック」といいます。
このクリンチェックを使ってインビザラインの設計、デザインをしていくわけですが、ここで歯科医師によって全く違いが出てくるのです。
歯科医師がこのクリンチェックを使って、まずゴールの設定を決めます。
患者さんの治療ゴールがどういうものになるかということを、1本1本の歯について細かく設定していく必要があるのですが、この時点で既に歯科医師によって全然違う治療シミュレーションとなります。
なぜかというと、歯科医師によって治療目標、治療に対する考え方、矯正治療を学んだバックグラウンド、テクニック、そういったものがこの治療ゴールに反映されるからです。
そして、治療ゴールを設定したら次に設定しないといけないのが、歯の動きです。
ここで設定しているのは、どの歯をどういう順番で、どれだけの量、いつ動かすのか、ということです。
インビザラインの連続の動きはソフトウェア上で見れますが、流れは治療前の状態、治療後の状態まで直線的なわけではありません。
治療前後の流れを設定したところで歯というのは絶対そのようには動きません。
なぜなら歯根の大きさや形態も違えば、骨の厚みも違いますし、歯の力関係、バイオメカニクスについても考慮してデザインしないとその通りには絶対動かないのです。
次に、その動きを実現するような「アタッチメント」をデザインしないといけません。
このアタッチメントをどの歯に、どの大きさのものを、いつ、どういうポジションにつけるのか、ということをデザインしていかないときちんと力が伝わらないということになります。
バイオメカニクスについての理解がないとマウスピースは実際にうまく機能しないのです。
このように治療のゴール設定、動きの設定、そしてその動きを実現するアタッチメントのデザイン、これら3拍子がきちんと揃っていないと歯はきちんと動かず、マウスピース型矯正装置インビザラインによる矯正治療は成功しないのです。
以上のような理由で、「マウスピース型装置による矯正治療は、どこで受けても同じような施術が受けられる」わけでは決してありません。
「ただ歯を並べれば良い」のではなく、様々なことを考慮しながら、知識・テクニックを駆使して矯正治療を成功に導くのです。
単に「安いから」という理由でマウスピース型装置による矯正治療を受ける歯科医院を選ぶべきではないと思います。
よくご検討いただきたいと思います。
2023年01月19日 更新