真の予防歯科〜未病の段階で防げる力が歯科にはある!
「未病」という言葉を耳にしたことがありますか?
「未病」とは健康状態が、ここまでは健康、ここからは病気と明確に区分けできるわけでなく、健康と病気の間で連続的に変化しており、その状態のことを指して言います。
未病とは病気になってからの治療よりも、病気になる前の治療・習慣が重要という予防医学の概念です。
この未病の改善が歯科にはできます。
歯のメンテナンスや定期検診を予防歯科と考えられている方が多いかと思います。
「予防歯科」=「歯の掃除」という認識の限り、本当の予防歯科とは言えないと考えています。
これからは、そもそも、むし歯や歯周病や歯列不正にならないようにしなければいけません。
そのためにも、クリーニングだけなく食育などもアドバイスし、悪い細菌が少ない口腔内と栄養バランス等を整えたり、歯列不正を招く生活習慣を改める必要があります。
また、一度むし歯や歯周病になっても再発させない「マイナスをゼロにする」といった治療ではなく、一度もむし歯や歯周病や歯列不正にならない・させない「マイナスを経験させない」ことこそが、歯科医療従事者の使命・責任と考えております。
古くから『口は健康の入り口、魂の出口』と言われています。
口の清潔を保つことは、おいしく食べて栄養をとり、楽しく話せる豊かな人生につながっていきます。
入り口が汚れた状態だと、生きるために大切なものがすべて汚れて自分の体に入ることになる。いくつになっても、日々の暮らしを楽しめる人生を送りたいなら、早い段階から口腔内の健康に気を配ることがとても重要です。
よりよく生きて、食べて、暮らす――口腔ケア(毎日のお家でのケア・歯科医院でのプロケア)は、これからの豊かな人生のために欠かせない習慣です。
口腔ケアが感染症リスクを下げます。
口腔ケアは、全身疾患の予防の観点からも重要です。
口の中には、たくさんの善玉菌と悪玉菌が住み着いています。
悪玉菌とは、歯周病菌やむし歯菌など口腔内の健康を害する菌ですが、悪さをするのは口の中だけにとどまりません。
悪玉菌は食べ物や唾液と胃腸に届き、腸内環境を悪化させます。
さらに歯周病菌が引き起こした炎症によって生み出されるサイトカインは、歯肉の毛細血管の血液に乗って全身に運ばれて、血管壁や脂肪組織、筋肉などに作用して高血圧や糖尿病、動脈硬化、肥満などさまざまな生活習慣病を悪化させるのです。
さらには最近では、口腔ケアがインフルエンザなどの感染症予防にもつながることがわかっています。
口腔内が清潔な状態に保たれていると、口腔内にウイルスが侵入しても感染が成立しにくいのです。
なぜなら、ウイルスは、皮膚や粘膜に付着するだけでは感染しません。
感染が成立するには、細胞壁のバリアを超えてウイルスが細胞内部に侵入する必要があります。
このとき細胞壁をこじ開けるサポート役を果たすのは、口の中にあるタンパク分解酵素です。
歯周病菌はこのタンパク分解酵素を大量に放出しているのです。
つまり、口腔ケアが不十分で歯周病菌が多い人ほど、ウイルス感染のリスクが上がるのです。
しかも、ウイルスと細菌の“重感染”を起こすので、感染症状が悪化しやすくなります。
だから、インフルエンザや風邪の感染予防対策では、毎日の歯磨きで悪玉菌のエサとなる食べカスや歯垢を取り除くことが重要なのです。
この感染メカニズムは、インフルエンザや風邪にかぎらず、新型コロナウイルスにおいても同様である可能性があります。
また、当院が力を入れているMFT(口腔育成トレーニング)は子どもの将来の未病対策にもなると考えています。
なぜなら、MFTの大きな目的の1つである鼻呼吸の習慣化(=口呼吸をやめさせること)は感染症対策にもなるからです。
口呼吸が招く歯列不正は口腔ケアを難しくし、歯周病やむし歯を誘発します。
歯並びが綺麗なことは、歯周病やむし歯の予防にも極めて大切です。
※口呼吸は万病の元です!!
口は全身から見たら小さな器官ですが、健康と毎日の幸せを支えてくれるとても大切な存在です。
今日の口腔ケアやMFTが、未来の安心と幸せにつながると考えて、口腔ケアやMFTを楽しみながら続けてほしいと思います。
徹底した口腔ケアやMFTは、未来の自分や子どもへの投資です。
歯の健康から生活習慣病や感染症の予防まで、心と身体と人生に良いことがたくさん返ってきます。
手間を惜しまずに、毎日を大切にしていただきたいと思います。
2022年05月29日 更新