きし歯科ファミリークリニックは
大分市賀来にある歯科医院です。

甲子園で連日熱闘が繰り広げられています。

炎天下の中のスポーツは熱中症が心配かと思いますが、我々歯科医師は同時にむし歯も心配になります。

スポーツドリンクを過剰に、あるいは日常的に摂取することは健康に対し大きなリスクがあります。

事実、国際歯科連盟の発表によると2012年ロンドンオリンピックのアスリート399名のうち55％にむし歯、18％では競技に影響する歯科疾患が認められました。これは出身国の多様性という背景もありますが、スポーツドリンクとむし歯の関係は対策しなければならない課題と位置付けられています。

 

運動時に大量の水分補給をする場合、塩分を中心とした電解質を同時に摂取することが必要です。
厚労省は熱中症診療ガイドラインで0.1～0.2％の食塩水を20～30分おきに200ml程度摂取することを推奨しています。
しかし食塩水は自作する必要があり、おいしいものでもありません。
そこで入手が容易なスポーツドリンクを代用することが多いですが、これらは多量の糖分で甘味を加えています。

このように人工的に添加された糖分などを遊離糖といい、近年WHOは大きな健康被害をもたらすとアナウンスを強めています。
遊離糖の問題点は吸収性が良すぎるため、血糖値が急激に上昇することにあります。
このとき身体は適正な血糖値に戻そうと水分を求めるため口渇感は解消されづらく、脳に強い快楽を与え依存性を示します。

 

上述のように健康にも決して良いとは言えないスポーツドリンクですが、最近は熱中症対策のため、スポーツドリンクを持ってきても良いという学校もあるようです。
ご存知かも知れませんが、スポーツドリンクにはかなりの量の砂糖が含まれています。
500mℓのペットボトルだと大体、角砂糖30個分（スティックシュガー10本分）くらい入っています。数字にすると意外と多いことが分かります。

 

それならばノンシュガーのスポーツドリンクなら、むし歯にならないのでは？と思う方がいるかも知れません。

実は、ノンシュガーでもスポーツドリンクは歯に悪いと言えるのです。

 

上の表をご覧いただけると分かる通り、スポーツドリンクは酸性度の高い飲み物です。
ノンシュガースポーツドリンクでもpHが低いのでむし歯を悪化させたり歯を溶かし酸蝕歯になる可能性があります。
pHが５.５以下になると歯が溶けます！
通常は食べ物や飲み物を飲んで口の中が酸性になっても、唾液により薄まってしまうので、むし歯になりにくいようになってます。
しかし、頻繁に酸性のスポーツドリンクを飲んでいると、口の中がずっと酸性になり、歯が溶けてしまいむし歯にもなりやすい環境になってしまいます。
もし口の中にむし歯や磨き残しのプラークが付いていたら、むし歯をどんどん進行させてしまう事になります。

 

事実、

・スポーツドリンクを常飲している子供はとてもむし歯が多い！！！
・小さい頃から、通院してもらってせっかくむし歯ゼロで大きくなっていたのに中学生になった途端、部活でスポーツドリンクを飲むようになり、むし歯になってしまった子
・風邪をひいた時の水分補給のためスポーツドリンクを哺乳瓶で飲んだのをきっかけに飲み続けて、むし歯だらけになってしまった赤ちゃん
・いつも仕上げ磨きをしてもらって甘いお菓子もそれほど食べていないのに来院のたびに常にむし歯ができている子。不思議に思って聞くと、熱中症対策にお茶の代わりにスポーツドリンクを飲んでいる・・・

 

哺乳瓶やペットボトルや水筒の場合、一気に飲むのではなく少しずつ飲むことも多いので、よりむし歯になりやすいです。

 

ジュースは歯を溶かすという事実が分かる実験があります。

まず歯の半分をワックスでカバーして歯が溶けないようにします。
お茶とスポーツドリンクに浸け、その後にカバーを除去しました。
お茶では全く変化しません。
スポーツドリンクでは歯が溶けて白くなっています。
この歯が溶けている状態がむし歯です。
寝ている時や、運動中は唾液が出ないので口がカラカラです。その時にジュースを飲むことは、この実験と同じことが口の中で起こっていると言えます。

 

身近な飲食物にもpH値5.5以下のものが多く存在します。生活で馴染み深いお醤油はpH値4.7 と、意外にも酸性に分類されます。

重要なのは「pH値」です！
歯のエナメル質はpH値5.5以下で溶けます。
pH値の低いものを摂取しないことは現実的には難しいので、酸性度が低い状態をできるだけ少なくすることが大切です。飲食の回数を決め、ダラダラと食べたり飲んだりしないように気をつけましょう。

依存性もあり、歯にも健康にも決して良いとは言えないスポーツドリンクの飲み過ぎにはくれぐれも注意していただきたいと思います。