保護者からの質問と回答。
大分県スポーツ協会の研修部会に所属して定期的に活動しています。
以下に掲載するのは、一般の方向けの研修会での受講者からの質問と私の回答になります。
同様の疑問をお持ちの保護者の方が多いかと思いますので、参考にされて下さい。
質問:「小学校6年生なのですが、あごが小さいと言われ歯並びがガタガタです。あごを使うように言われました。やはり乳歯の時にあまりあごを使わなかったからでしょうか。下の子供が幼稚園で生え変わりの時期なのですが硬い食べ物などを意識して食べて顎を強くしたら歯並びはきれいになりますか?」
回答:
小学6年生ということで、残念ですが上顎骨の成長はほぼ止まっているので顎をよく使う(=よく噛む)ことで歯並びが良くなることは考えにくいです。
上顎骨は生まれてから5歳までに80%の成長を遂げ、12歳でほぼ100%完成してしまいます。
小児口腔育成では、顎骨の成長のピークを知ることがとても重要となります。
思春期には上顎骨はほとんど成長しません。
上顎骨が小さいとその中に収まる下顎骨も成長できません。
良い歯並びには上顎骨の成長が不可欠です。
3歳頃に乳歯列は完成します(=乳歯が全て生え揃う)が、保護者の多くは正常な乳歯列を知りません。
正常な乳歯列は歯と歯の間に十分な隙間がある歯列です。歯と歯の間の隙間は、永久歯列では審美的な観点から好ましくありませんが、 乳歯列では乳歯よりも大きい永久歯がきれいに並ぶために隙間がないといけません。空隙歯列= 正常な乳歯列
空隙歯列⬇︎
歯間空隙が無い歯列=閉鎖歯列
閉鎖歯列の子どもは、スペース不足で将来きれいに永久歯が並びません。
閉鎖歯列は一見すると綺麗ですが、乳歯列にとっては良くない歯並びなのです。
閉鎖歯列⬇︎
現在、3歳の時点で閉鎖歯列の子どもが凄く増えてきています。
つまり、3歳までの時点で上顎骨の成長が不足しているのです。
幼稚園で硬い食べ物などを意識して食べても歯並びはきれいになりますか?という質問ですが、その子がどういう歯列かが分かりませんので明確な回答はできませんが、下の写真のように既に叢生(=ガタガタ歯並び)であれば、ほぼ確実に永久歯列では叢生になります。
閉鎖歯列でも永久歯列では叢生になる可能性は高いでしょう。
幼稚園の頃から硬い物を噛ませることは顎骨の成長に意味がないことは決してありませんが、上顎骨は6歳で80%成長している(残り20%しか成長できない)ので本当はもっと早い時期から子どもの歯並びについて歯科医師に相談して欲しかったところです。
正常な永久歯列のためには、できるだけ早期から顎骨の成長を促進させる(=正常な顎骨の成長を妨げない)ことが必要です。
実は、正常な永久歯列のためには、乳児の段階での哺乳や離乳食の与え方、抱っこの仕方、寝かせ方も大切なのです。
逆に言えば、正しい哺乳や離乳食の与え方、抱っこの仕方、寝かせ方を知らないと、正常な永久歯列のために必要な顎骨の成長を促すことができないということです。
乳幼児期からの口腔育成は成長の基礎であり、ここを疎かにしてしまうと、「口呼吸」「姿勢が悪い」「手や指をうまく使えない」「歯ぎしり」「いびき」「集中力がない」など、あらゆる問題の原因となってしまう可能性もあります。
子どもを総合的に診ることで異常に早く気づき、早期に介入することで子ども自身の成長だけできれいな歯並びになっていくことが理想ですし、口腔育成や食育により一生涯を通しての健康を手に入れるための支援も必須だと考えています。
当院では、希望される方には乳児の段階ではお母さん方へ哺乳や離乳食の与え方といった口腔育成の土台作りに関するアドバイス、主に3歳からは口腔育成トレーニングとマウスピースを使用した小児口腔育成を行なっています。
2022年08月30日 更新