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よくある質問:「ブラッシングは食後30分経ってからが良いの?」

以前、「食後すぐに歯をみがくと、食事中に表層脱灰されたエナメル質を傷付けるため、唾液による再石灰化で表層脱灰が修復される時間を置いたほうがいい」とテレビ番組で放送されてしまいました。

これは元々酸蝕症に関する話だったにもかかわらず、報道のされ方が誤ったまま「食後30分以内のブラッシングは避けるべきである」という考えが広がってしまいました。

 

むし歯予防のブラッシングの目的は、酸を産生する細菌のエサとなる発酵性糖質を取り除いて、酸を出させないようにすることです。

「食後すぐ」が正しいブラッシングです。

 

『食後すぐ歯を磨くと、歯の表面が傷ついてしまう』という内容に近い論文は確かに存在します。『象牙質』の酸に対する抵抗性を調べた実験についての論文です。
実験では炭酸飲料に象牙質の破片をつけると、象牙質が弱くなることが示されています。
炭酸飲料は酸性でpH5程度です。歯にダメージが出やすいpHは5.5以下といわれていますので、炭酸飲料を飲むと歯の表面が溶け、傷つきやすくなるわけです。
この実験ではさらに、炭酸飲料でダメージを受けた象牙質の破片を、30分以上、口に含んでいると、唾液の作用で象牙質が再び強くなることが示されております。
以前のブログでもお伝えしていますが、唾液には緩衝作用があり、酸を中和する働きがあります。
この実験が示しているのはあくまでも、『炭酸飲料を飲んだ直後に歯を磨くと、歯の象牙質を傷つけやすい』ということです。
しかし、実際の口の中は、実験室とは大きく異なります。
『象牙質』の周囲には、『象牙質』よりはるかに頑丈な『エナメル質』があり、象牙質を保護しています。
こうしたことを考慮すると食後すぐの歯磨きで歯を傷つけてしまうリスクはとても小さなリスクといえます。

 

しかしながら、2011年以降にこの情報が広まるにつれて

「食後30分後をめどに歯みがきを行なう。」という部分のみが独り歩きをしてしまい、

「食後30分以内の歯みがきはNG!」という立派なフレーズが出来上がってしまいました。

2012年頃を中心に学校や家庭において「食後すぐにみがく」と「30分たってからみがく」のどちらにすればよいかという混乱が生まれました。

この状況を危惧した歯科界では、各学会でこの問題に対する検討が盛んに行われました。

 

2013年5月の日本口腔衛生学会総会において「食後30分間、ブラッシングを避けることの是非」のテーマで討論が行われ、

「食後30分間、ブラッシングを避ける」は正確性に欠ける表現である。
「酸性飲食物摂取直後のブラッシングは避ける」(酸蝕症に限定)という表現が適切である。
「30分間については、主に試験管内での酸蝕実験の結果に基づくもの」なので、今後の検討課題である。
「酸蝕症は主に成人期の問題であり、通常の食生活習慣を持つ小児・未成年期には適応されない」
したがって
「食後のブラッシングは、これまで通り、齲蝕の予防に有用と言える。」

と結論が出されました。

 

また、2013年10月には日本歯科保存学会の学術大会において、歯科保存学会としての声明が出されました。

もちろん、口腔衛生学会と同様に歯みがきは食後の早い時間内に行なうことを勧める内容です。

さらに、同年に日本小児歯科学会においても同様の見解が出されました。

 

各学会からこのような結論が出されているわけですので、「食後30分以内の歯みがきはNG!」という表現は不適切です。

 

「食後すぐ」が正しいブラッシングです。

 

 

 

2022年09月08日 更新

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