なぜ歯科医院に管理栄養士が必要なのか 〜「口から食べる」を守るためのチーム医療〜
私たちの身体は、毎日の「食事」によってつくられています。
皮膚や筋肉、内臓などの組織は、およそ60日周期で新陳代謝を繰り返しており、今の身体は、2か月前からの食生活の積み重ねとも言えます。
つまり、食事は単なる栄養補給ではなく、身体そのものをつくる行為なのです。

「口から食べる」ことは、医学的にも最善の栄養摂取法
口腔機能が低下し、口から食べることが難しくなると、栄養摂取は胃ろうや点滴、中心静脈栄養といった「代替栄養」に頼らざるを得なくなります。
しかし、「食べられなくなっても点滴があるから大丈夫」という考えは、決して正しいとは言えません。
たとえ胃ろうで胃腸を使っていても、
噛むことによる刺激
味覚や満足感
唾液分泌や自律神経の調整
消化・代謝機能の活性化
といった経口摂取ならではの生理的反応は大きく失われてしまいます。
また、点滴や中心静脈栄養では、摂取できる栄養の種類は限られ、
長期間続くことで、
消化管の萎縮
口腔乾燥や誤嚥性肺炎のリスク増加
腸内細菌バランスの乱れ
免疫力・認知機能の低下
など、全身にさまざまな悪影響を及ぼすことが知られています。
現代医学においても、「口から食べる」ことに勝る栄養摂取法は存在しません。
噛める口は、脳と全身の健康を支えます
食物をしっかり噛むことで、脳の海馬や前頭前野が刺激され、血流が増加することが分かっています。
実際に、
歯を失い、義歯も使用していない人は
歯が20本以上残っている人に比べて
認知症の発症リスクが約1.9倍高い
という報告もあります。
噛める口を守ることは、認知機能や生活の質(QOL)を守ることにも直結しているのです。
「口腔の状態」が、食事内容を大きく左右する
経口摂取と経管栄養を比較する議論では、「生理的反応の違い」が注目されがちですが、
実は最も大きな違いは、口腔の状態によって“食べられる内容そのもの”が変わるという点です。
特に重要なのが、
大臼歯があるかどうか
噛み合わせ(咬合支持)が保たれているか
大臼歯の咬合支持を失うと、
噛みにくい肉・魚・野菜を避け、
糖質に偏った食事や、たんぱく質不足に陥りやすくなることが分かっています。
つまり、
口腔機能の低下 = 栄養状態の悪化
という関係が、密接に存在しているのです。
だからこそ、歯科医院に「管理栄養士」が必要です
歯科医師・歯科衛生士が「噛める口」「飲み込める口」を守り、
管理栄養士が「その口で、何を・どう食べるか」を支える。
この両輪がそろってこそ、
はじめて “口から食べ続けられる人生” を実現できます。
当院に管理栄養士が在籍しているのは、
歯並びや噛み合わせ
義歯や補綴治療
口腔機能・嚥下機能
といった歯科の視点と、
栄養バランス
食形態・調理方法
ライフステージや疾患に応じた食事
を一体として考える医療を行うためです。
「食べる」を最善にすることが、歯科の使命
人が人間らしく生きるために、
「口から食べること」は、栄養以上の価値を持っています。
食べる楽しみ、喜び、生きる活力。
そして、全身の健康と尊厳を守ること。
「口から食べる」を最善の状態に保つこと。
それこそが、私たち歯科医療に携わる者の使命であり、
管理栄養士とともに取り組む理由なのです。
現在、当院では管理栄養士による相談体制を整備・強化しております。
乞うご期待!!
医療法人きし歯科ファミリークリニック 院長 岸 岳宏
2026年02月11日 更新






